みなさん次のような症状があれば、どこが悪いと思いますか?
 
 「疲れやすい」「イライラする」「元気がでない」「運動能力が落ちた」
 これらは、「日本内科学会雑誌 2010年6月号:鉄欠乏 日本の現状と病態」に掲載されている「非貧血性鉄欠乏症」の症状です。
 
 もちろん、このような症状を呈する疾患は、うつ病をはじめとして枚挙に暇がありませんが、はて「非貧血性鉄欠乏症」ってなんでしょう?
 
 「鉄欠乏性貧血」という疾患は耳にされたことがあるでしょう。鉄不足で、赤血球内で酸素を運ぶヘモグロビンという鉄と結合した蛋白質の数が減ってしまう貧血です。
 
 実は、鉄というのは生体にとってとても大事な金属なので、食事から摂れなくなったり、出血があったときに備えて、主に肝臓に蓄えているのです。いわば鉄の貯金ですね。一般的にはこの貯金が枯渇すると、貧血が起こるとされていますが、貧血にまでは至らなくてもほとんど枯渇しかけた状態、これを「非貧血性鉄欠乏症」とか「潜在性鉄欠乏症」というのです。
 
 容易に想像できると思いますが、貯金(ストック)が枯渇してくれば、金使い(フロー)もしぼんできますよね。
 
 鉄は、ヘモグロビンの材料になるだけではなく、各細胞のミトコンドリアにおけるエネルギー代謝の触媒のような働きをします。さらに、トリプトファンというアミノ酸からセロトニンができる過程で、チロシンというアミノ酸からドーパミンができる過程で、鉄が必要になってくるのです。
 
皆さんは、たとえば次のような献立をご覧になってどう思われますか?
 
朝食
  ご飯1膳(140g)、豆腐の味噌汁(豆腐50g)、焼き魚(白鮭80g)、納豆(50g)、ほうれん草のお浸し(50g)
 
昼食
 冷やし中華(麺120g、具:ハム2枚、卵0.5個、きゅうり4.0g)
 
間食 モンブラン1個
 
夕食
 ご飯1膳、ハンバーグ(牛肉100g)、野菜サラダ、ポタージュスープ
 
 けっこうヘビーというか、鉄も十分含まれていそうなメニューですね。文部科学省の栄養成分表に基づくと、総カロリーは2044 kcal、鉄は8.26 mgとなります。
 
 厚生労働省の食事摂取基準によると、成人男子の1日の鉄推奨量は7.5 mgですが、月経のある成人女性は10.5 mgなので、このメニューでは足りないということになります。
 
もう少し考えてみましょう。
 
 鉄は、基本的に体内でリサイクルされるのですが、腸管粘膜細胞の脱落などにより、1日約1mg失われます。よってこれを補うために、成人男性では7.5 mgの鉄を摂取して、1mgの鉄を吸収しているということになります。
 
 月経のある女性は、平均して、ひと月に25mgの鉄を失うと推計されています。これを1日あたりに直すと約1mgですから、1日に合計2mgの鉄を吸収する必要があります。
つまり成人男性の2倍くらい鉄を摂取すべきではないのかということです。
 
いずれにせよ、月経のある女性にとって、十分な鉄を摂取するのはたいへんであるとことがわかると思います。
 
 厚生労働省が実施する「国民健康・栄養調査」によれば、2000年代に入り、血清フェリチン値が14ng/ml以下の鉄欠乏状態にある女性の割合は、おおむね20%で推移しています。これを月経のある世代に絞ってみると、なんと45%となります。
 また、比重不足で献血できなかった女性の割合は、ここ20年、10%くらいから20%近くへ増加傾向にあります(日本内科学雑誌 2010年6月号)。
 
経済成長の止まってしまった我が国ですが、鉄の補充で景気もよくなるかもしれません。
 

 「動物性の食材を避け、野菜中心のヘルシーメニュー」では、鉄分をはじめとする十分なミネラルやタンパク質が摂れないのではないかと懸念されます。

 
 ちなみに、ホウレンソウに鉄分が多いのは昔の話です。食品成分表によれば、ホウレンソウに含まれる鉄分は、100gあたり1951年 13 mg → 1982年 3.7 mg → 2000年 2 mg だそうです。ポパイも真っ青ですね。
 
 2007年の「ヨーロピアン・ジャーナル オブ クリニカル・ニュートリション(ヨーロッパ臨床栄養学雑誌)」には、「うつ病と血清フェリチン値との関係」という論文が載っています。これによると、20代女子学生で調査したところ、血清フェリチンが15ng/ml未満の人は、それ以上の人と比較して、ベック自記式抑うつ尺度11点以上(うつ傾向あり)の比率が約2倍という報告もあります。
 
以上を踏まえ、個人的にはこう申し上げたいです。
 
 「日本の女性よ、特に若い方、もっと肉食してください。そして、いちどフェリチン値を調べてみてください」
 
 
 
 
                 
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